兼子 愛美
なぜ、KENTAは高橋ヒロムを丸め込みで倒したのか?
なぜ、KENTAは高橋ヒロムを丸め込みで倒したのか?
“go 2 sleep”でも“GAME OVER”でもない。敢えてのスクールボーイで勝利。それは石井智宏選手を破った形と全く同じ流れだった。
戦前から高橋ヒロム選手は対ヘビー級路線を掲げた先輩であるKENTA選手へ何かを求めていた。
ヘビーとジュニアの境界線が曖昧になった今から、あなたが考えるヘビーとジュニアの違いとは何ですか?と。
そんな迷える子羊に対して、かつて“Black Sun”と呼ばれた男は今の自分を貫くことで、その質問に答えた。
昔の俺にも誇りを持っているし、今の俺にも誇りを持っている、と。
試合を見てみるとVSジュニアだからといった動きは特になく、いつも通り“KENTA2021”で高橋ヒロム選手を打撃と技術で圧倒した上で倒した。
見ているこっちがこりゃ勝てねぇなぁ...と思う試合内容だ。
高橋ヒロム選手は相当悔しかったに違いない。
実際、“ジュニアのKENTA”を引き出そうとしていたシーンもあった。
真正面から蹴りも張り手も受ける。
ジュニアのサイズでヘビー級で戦っている男の攻撃を真っ向から受ける機会はなかなかない。
ヘビー級で戦うとは何か。その意味を知るために痛みを求めていた。
そんな高橋ヒロム選手に対して、「こんな負け方かよ...」と思わせるような丸め込み勝利。
“go 2 sleep”でも“GAME OVER”でもない。
とことん悔しさが募る敗北。
その裏側には「また遊んでやるよ」って気持ちと「今のKENTAを見せつける」意味があったように思う。
“無冠の王者”オカダ・カズチカの狙いを徹底考察
“無冠の王者”オカダ・カズチカの狙いを徹底考察。
2021年秋。再び土砂降りの金の雨が日本武道館に降り注いだ。
一夜明けた2021年10月23日。「G1クライマックス31」を制したオカダ・カズチカは胸中に秘めた本当の目的を口にした。
「4代目IWGPヘビー級ベルトを権利証の代わりに持たせて欲しい」、と。
この発言について3つ思うことがある。
権利証システムの崩壊
レインメーカー復活の本当の意味
鷹木信悟の立場
まずは、2012年から続いた「G1クライマックス」覇者の権利証システムがある終わりを告げたことだ。
元々、権利証システムはオカダ・カズチカが「G1クライマックス」初出場、初優勝を成し遂げた時、マネージャーだった外道が提案したものである。
「レインメーカーに相応しい(タイトルマッチ)の場所を用意しろ」
つまりは東京ドーム。最も盛り上がる場所で、G1クライマックス覇者が新日本プロレスの頂きに挑戦。これが“レインテーカー”外道の狙いだったのだ。
そこから権利証システムには不思議なジンクスがつきまとうようになった。
2020年まで権利証が動くことはなかった。飯伏幸太がジェイ・ホワイトに負けるまで、一度たりとも権利証が動くことはなかったのだ。
※結果的に飯伏幸太は内藤哲也から指名を受けて、“イッテンヨン”東京ドームのリングに立つこととなった。
話を戻そう。「G1クライマックス」覇者は例年、IWGPヘビー級王者への挑戦権を獲得。その権利を保持しつ続ける戦いへ身を投じるのがセオリーだった。
ブリーフケースに入れた権利証を守り続ける。そう、チャンピオンと同じように。
今回、オカダ・カズチカは権利証ではなくIWGPヘビー級ベルトを求めた。
一方でIWGP世界ヘビー級王者への挑戦権は必要ないと。
今、新日本プロレスの権威が揺らぎ始めている。